今回は連続増配ETF「SDY」を取り上げていきます。
概要
時間がない方向けの概要としては次の通りです。
- SDYはS&P高配当貴族指数(S&P High Yield Dividend Aristocrats Index)に連動するように設計されているETF。
- メリットが4点ある。
- デメリットもある。
- SDYを使ったポートフォリオ例もあるよ。
SDYって何?
まずはSDYの特徴を見ていきます。
SDY(SPDR S&P Dividend ETF)とは、StateStreet社が提供している「上場投資信託(ETF)」の一種です。
SDYは「S&P高配当貴族指数(S&P High Yield Dividend Aristocrats Index)」に連動するように設計されているETFで、2005年11月15日に設定されました。
S&P高配当貴族指数(S&P High Yield Dividend Aristocrats Index)とは?
S&P高配当貴族指数は、「20年以上連続して配当を増やし続けてきた企業」で構成される株価指数で、以下の4つの条件があります。
・S&P500の構成銘柄であること
・20年以上連続で増配していること
・時価総額が30億米ドル以上であること
・1日あたりの平均売買代金が500万米ドル以上であること
また、一度でも配当金を減配、あるいは据え置きしたとしてもこの指数の対象銘柄から除外されます。ベースとなるS&P500から外れた場合も対象から除外されるため、この指数の構成銘柄であり続けることは、相当厳しい条件をクリアしていると言えます。
※20年以上連続増配すると配当貴族、50年以上連続増配すると配当王と呼ばれる。
つまり、このS&P500配当貴族指数に組み入れられる銘柄は、景気が良い時も悪い時も配当を増やし続けられるくらい業績や財務基盤が安定した大型企業であることが言えます。
このベンチマークに連動するSDYは「20年以上連続増配している米国企業で構成されたETF」、「業績や財務健全性が高い企業で構成されたETF」という特徴を持っています。
SDYは年4回の決算(3・6・9・12月)において分配金が支払われます。利回りはおよそ2~3%です。
連続増配企業を中心に構成されていることもあり、年間分配金の推移を見るとは年々増配傾向にあります。しかし、高配当ETFであるVYMやSPYD、HDVと比べると若干見劣りします。ただし、先述したとおり、連続増配する企業で構成されており、他の企業と比べ競争力や成長力が高く、投資家もそれを見越し買い続けることが考えられることから、値上がりや増配が期待できる非常に堅調なETFとなっています。
SDYの基礎情報は次のとおりです。
ティッカー | SDY |
名称 | SPDR S&P Dividend ETF |
運用会社 | State Street |
ベンチマーク | S&P High Yield Dividend Aristocrats Index |
市場 | NYSE ARCA |
経費率 | 0.35% |
構成銘柄数 | 136 |
以下のセクター構成を見ると、資本財・サービス、生活必需品、公共事業などのディフェンシブセクターに分散投資していることがわかります。
※2024年3月14日時点の情報。
SDYの主要構成銘柄は次のとおりです。
世界を代表するディフェンシブ銘柄の大企業が多く入っていることがわかります。
ティッカー | 会社名 | 構成比率 |
3M | 3M CO(スリーエム) | 2.38 % |
O | REALTY INCOME CORP(リアルティインカム) | 1.97 % |
EIX | EDISON INTERNATIONAL(エジソンインターナショナル) | 1.80 % |
IBM | INTL BUSINESS MACHINES CORP(アイビーエム) | 1.77 % |
ABBV | ABBVIE INC(アッヴィ) | 1.73 % |
CVX | CHEVRON CORP(シェブロン) | 1.70 % |
XOM | Exxon Mobil Corp.(エクソンモービル) | 1.67 % |
TROW | T ROWE PRICE GROUP INC(ティー・ロウ・プライス) | 1.65 % |
KMB | KIMBERLY CLARK CORP(キンバリークラーク) | 1.61 % |
SO | SOUTHERN CO(サザン) | 1.59 % |
※2024年3月14日時点の情報。
SDYのチャートで見るパフォーマンスは?
SDYの設定日(2005年11月15日)以来チャートを見てみましょう。
コロナショックによりSDYも大きく下落をしていきました。しかし、以下の理由により回復し、堅調な推移で価格を上昇させています。
- 連続増配企業を対象としているため、財務的に健全であり、安定して競争力の高いビジネスモデルを持っていた
- 米国の積極的経済政策と連続増配企業の競争力が組み合わさり、高い経済成長力をキープした
- VIGは130を超えるディフェンシブ銘柄に分散投資をしているため、一部企業の業績が低迷しても、全体としてのパフォーマンスに大きな影響を与えなかった。
- ベンチマークについて、1年に1度(毎年1月)銘柄入替を行い、競争力や成長力の高い連続増配企業を採用し続けたことが投資家に好感された
増配傾向+値上がり(キャピタルゲイン)+配当が期待できる魅力あるETFといえます。
SDYのメリット
SDYのそれぞれメリットを見ていきましょう。後ほどデメリットも記載しますが、そのデメリットを上回るメリットがありますので、高配当投資を目指す方には一考の余地があると思います。
- 分散投資が可能
- 今後高配当化することが期待できる
- 値上がり益(キャピタルゲイン)が狙える
- 経費率が低い
1.分散投資が可能
SDY1銘柄だけで約130社への分散投資を行えるので、1企業の業績が悪化した場合にも価格変動リスクを大幅に抑えられるでしょう。
企業選定や分析をStateStreet社のプロに任せることができ、その間自分は好きなことに時間を使えることも大きなメリットです。
またSDYは分散が効いているため、「どの米国株に投資したらいいかわからない」という方にも適しています。
2.今後高配当化することが期待できる
現在の配当利回りは2~3%であり高配当ETFと比較すると見劣りするかもしれません。
ただし、連続増配企業で構成されており、分配金は右肩上がりで動くことが予想されます。
SDYをホールドし続け、配当再投資を繰り返すことで分配金はさらに大きくなり、高配当ETF化することも夢ではありません。
3.値上がり益(キャピタルゲイン)が狙える
20年以上連続増配企業が主な投資対象であり、安定した財務健全性を持ち、株主還元に積極的なことから、株価の上昇も期待できます。
設定以来で135%を超える値上がり率を記録しています。(上記チャート参照)
分配を受け取りつつ値上がり(キャピタルゲイン)も狙える銘柄として非常に優秀です。
4.経費率が低い
経費率とはファンドの資産残高に対する、ファンドの運用などにかかる経費の比率のことです。当然ながらお財布から出ていくお金は少ない方がよく、SDYの経費率は0.35%と脅威の低コストを実現させています。
先述のとおり、連続増配銘柄130種で構成されるSDYを0.35%の経費率で買う事ができるのはほぼ反則技と言ってもいいくらいのコスパと言えます。
SDYのデメリット
次にデメリットを見ていきます。デメリットは次の4点です。
- 配当利回りが今は低い
- 値上がりはゆるやか
- 分配金の再投資が面倒
- 二重課税される。それを取り返すのが面倒
1.配当利回りが今は低い
SDYは20年間連続増配銘柄のみで構成されていますが、過去の平均利回りは2~3%程度と低めで、決して高配当と言えるETFではありません(ただし、上記メリットに記載したように今後高配当化することは期待できます)。
2.値上がりはゆるやか
先述の通りSDYは一定の値上がりは期待できますが、他のETFに比べ、値上がりはゆっくりです。
NASDAQを対象としたQQQ、S&P500を対象としたVOO、米国株式市場全体を対象とするVTIといった銘柄に比べると値上がり率は低いため、キャピタルゲインを狙うなら他のETFへの投資が有効です。
3.分配金の再投資が手間
長期投資では分配金を再投資して元本に組み入れ、複利効果を享受するのがセオリーですが、ETFは投資信託と異なり、自動で再投資することができません。SDYから支払われた分配金を再投資するには自分で買付を行わなければならないため、手間がかかります。また、1回で受け取る分配金がSDYの1口分に満たなければ、分配金をそのまま再投資に回すことはできません。資金繰りやドル転のタイミングなども考慮しなくてはならないため、投資信託と比べ手間が多く発生します。長期投資を行うにあたって分配金を自動で再投資したい方は投資信託を活用することをおすすめします。
4.二重課税される。それを取り返すのが面倒
SDYは米国ETFであるため、米国と日本でそれぞれ課税される「二重課税」の問題が起こります。米国ETFの分配金は米国で10%の税率で源泉徴収された後、残り90%に対して日本国内で20.315%の課税がなされます。
この二重課税を解消する方法として外国税額控除の仕組みが用意されていますが、控除を受けるためには自分で確定申告をしなければなりません。この確定申告が非常に面倒なため、取り返すのがおっくうになります。
以上が、SDYのデメリットとなります。
まとめ
- SDYは「S&P High Yield Dividend Aristocrats Index」に連動するように設計されているETF。
- SDYには他の銘柄に負けないメリットがある。
- デメリットもある。
SDYを使ったポートフォリオ例
最後に、SDYを使った投資の一例を紹介していきます。
基本のSDY100%ポートフォリオ
特徴:SDYのみで構成される基本的なポートフォリオ。
構成ETF | 比率(%) |
SDY(SPDR S&P Dividend ETF) | 100 |
高配当フォーカスポートフォリオ
特徴:SDYを中心に、他の高配当株ETFを組み合わせて、安定的な収益性を目指す。
構成ETF | 比率(%) |
SDY(SPDR S&P Dividend ETF) | 50 |
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF) | 20 |
SCHD(Schwab US Dividend Equity ETF) | 15 |
DVY(iShares Select Dividend ETF) | 15 |
配当貴族ブレンドポートフォリオ
特徴:配当貴族と他の高配当株ETFを組み合わせて、リスクを分散し安定的な成長を追求する。
構成ETF | 比率(%) |
SDY(SPDR S&P Dividend ETF) | 45 |
NOBL(ProShares S&P 500 Dividend Aristocrats ETF) | 25 |
VIG(Vanguard Dividend Appreciation Index Fund ETF) | 20 |
DGRO(iShares Core Dividend Growth ETF) | 10 |
インカム&クオリティ・フォーカスポートフォリオ
特徴:高い配当株(SDY)と高品質な成長株(QUAL)、株式と債券への分散を組み合わせて、リスクを均等に分散する。
構成ETF | 比率(%) |
SDY(SPDR S&P Dividend ETF) | 40 |
QUAL(VanEck MSCI International Quality ETF) | 30 |
VTI(Vanguard Total Stock Market Index Fund ETF) | 20 |
BND(Vanguard Total Bond Market Index Fund ETF) | 10 |
連続増配セクターバランスポートフォリオ
特徴:SDYと異なるセクターの高配当株に焦点を当て、リスクを分散し成長性を追求する。
構成ETF | 構成比率(%) |
SDY(SPDR S&P Dividend ETF) | 40 |
XLRE(Real Estate Select Sector SPDR Fund) | 20 |
XLY(Consumer Discretionary Select Sector SPDR Fund) | 15 |
XLC(Communication Services Select Sector SPDR Fund) | 15 |
XLU(Utilities Select Sector SPDR Fund) | 10 |
インカム&バリュー・ブレンドポートフォリオ
特徴:連続増配ETF(SDY)とバリュー株を組み合わせ、収益性とバリューのポテンシャルを追求する。
構成ETF | 構成比率(%) |
SDY(SPDR S&P Dividend ETF) | 50 |
VTV(Vanguard Value Index Fund ETF) | 25 |
SCHD(Schwab US Dividend Equity ETF) | 15 |
VIGI(Vanguard Intl Dividend Appreciation Index Fund ETF) | 10 |
人により取れるリスクは異なりますので、どの投資戦略が良いかは一概に言えません。
上記ポートフォリオ案が参考になれば幸甚です。
以上がSDYの紹介となります。次回もお付き合いいただけますと幸いです。