今回は高配当ETF「VYM」を取り上げていきます。
概要
時間がない方向けの概要としては次の通りです。
- VYMはFTSEハイディビデンド・イールド・インデックスで構成されているETF。
- 高配当ETFだが、値上がり益も期待できる等メリットが4点ある。
- デメリットもある。
- VYMを使ったポートフォリオ例もあるよ。
VYMって何?
まずはVYMの特徴を見ていきます。
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)とは、バンガード社が提供している「上場投資信託(ETF)」の一種です。
VYMは「FTSEハイディビデンド・イールド・インデックス」に連動するように設計されているETFで、2006年11月16日に設定されました。
米国株式市場におけるREITをのぞく高配当利回り銘柄で構成される株価指数。
時価総額加重平均型の株価指数であり、時価総額(株価×上場株式数)の影響を強く受ける。
VYMは年4回の決算(3月・6月・9月・12月)において分配金が支払われます
VYMの基礎情報は次のとおりです。
ティッカー | VYM |
名称 | Vanguard High Dividend Yield ETF |
運用会社 | Vanguard |
ベンチマーク | FTSE High Dividend Yield Index |
市場 | NYSE ARCA |
経費率 | 0.06% |
構成銘柄数 | 452 |
VYMの主要構成銘柄は次のとおりです。
構成比率は毎月変わりますが、構成銘柄の入れ替えは年1回だけ行われており、銘柄数が増減する可能性もあります。
ベンチマークであるFTSEハイディビデンド・イールド・インデックス指数そのものが平均以上の高配当を想定しているため、VYMも高い分配率が期待できます。
ティッカー | 会社名 | 構成比率 | Market value |
XOM | Exxon Mobil Corp.(エクソンモービル) | 3.35 % | $1,912,433,126 |
JPM | JPMorgan Chase & Co.(JPモルガン・チェース) | 3.17 % | $1,810,406,009 |
JNJ | Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン) | 2.83 % | $1,612,497,780 |
PG | Procter & Gamble Co.(プロクター・アンド・ギャンブル) | 2.79 % | $1,593,435,923 |
AVGO | Broadcom Inc.(ブロードコム) | 2.69 % | $1,533,132,635 |
HD | Home Depot Inc.(ホームデポ) | 2.28 % | $1,300,275,171 |
MRK | Merck & Co. Inc.(メルク) | 2.06 % | $1,176,551,329 |
CVX | Chevron Corp.(シェブロン) | 2.04 % | $1,163,127,382 |
ABBV | AbbVie Inc.(アッヴィ) | 1.97 % | $1,123,644,561 |
WMT | Walmart Inc.(ウォルマート) | 1.84 % | $1,052,336,869 |
※2023年10月31日時点の情報。
安定した高配当を出す金融、ヘルスケアの割合が高く、情報技術は7.6%という低めな構成比率となっています。
爆発的な値上がりよりも、安定した高配当を重視したセクター比率といえるでしょう。
※2023年10月31日時点の情報。
VYMのチャートで見るパフォーマンスは?
VYMの設定日(2006年11月16日)以来チャートを見てみましょう。
2009年リーマンショック、2020年コロナショックにより金融市場に大打撃を与え、全米の大型株で構成されたVYMも大きく下落をしていきました。しかし、その後回復し堅調な推移で価格を上昇させています。
創設当初は50.51ドル、現在は107.84ドルとなり、株価の成長にも期待できます。
配当だけでなく、キャピタルゲインにも期待できる銘柄として人気が出ています。
VYM・HDV・SPYDの3つを比較
高配当株を組み込んだ3つの高配当ETFを比較してみましょう。
いずれも配当率が高く、経費率も低めで、安定した収益が望める銘柄となっています。
→構成銘柄数が多く分散効果が高い。経費率の低さもあり、安定した長期運用におすすめ。
・SPYD
→S&P500の対象銘柄の中から特に高配当の80銘柄を対象としているため、配当利回りは高め。
・HDV
→財務健全性の高い銘柄(財務優良企業)を集中して組み入れていることから、安全性と高い利回りを両立させる銘柄。
VYM | SPYD | HDV | |
運用会社 | Vanguard | State Street | Black Rock |
ベンチマーク | FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス | S&P500高配当指数 | モーニングスター配当フォーカス指数 |
構成銘柄数 | 452 | 77 | 75 |
経費率 | 0.06% | 0.07% | 0.08% |
直近配当利回り | 3.11% | 4.79% | 4.03% |
基準価格 | 107.84 | 36.71 | 100.69 |
特徴 | 平均以上の配当利回りがある米国企業に広く分散して投資 | S&P500採用銘柄で、配当利回りの高い77銘柄に投資 | 米国財務優良企業のうち、配当利回りの高い銘柄75銘柄に投資 |
VYMのメリット
VYMのそれぞれメリットを見ていきましょう。後ほどデメリットも記載しますが、そのデメリットを上回るメリットがありますので、堅実な投資を目指す方には自信をもっておススメできます。
- 分配金が年4回もらえる
- 経費率が低い
- 分散投資が可能
- 値上がり益(キャピタルゲイン)が狙える
1.分配金が年4回もらえる
VYMは、3月・6月・9月・12月の年4回分配金が受け取れます。
四半期毎に配当金が出るため、定期的にキャッシュを得たい方には非常に大きなメリットと言えます。
VYMは保有しているだけで3%前後の配当金を得られるため、長期的な資産運用を目指している方にもおすすめできます。
2.経費率が低い
経費率とはファンドの資産残高に対する、ファンドの運用などにかかる経費の比率のことです。当然ながらお財布から出ていくお金は少ない方がよく、VYMの経費率は0.06%と脅威の低コストを実現させています。これはバンガード社は長年低コストの商品提供にこだわり続けているコスト意識に起因します。
先述のとおり、高配当銘柄452銘柄で構成されるVYMを0.06%の経費率で買う事ができるのはほぼ反則技と言ってもいいくらいのコスパと言えます。米国高配当ETFだと言われているSPYDの0.07%や、HDVの0.08%と比較してもその低さが際立ちます。
3.分散投資が可能
VYM1銘柄だけで約400社への分散投資を行えるので、1企業の業績が悪化した場合にも価格変動リスクを大幅に抑えられるでしょう。
企業選定や分析をVanguard社のプロに任せることができ、その間自分は好きなことに時間を使えることも大きなメリットです。
またVYMは米国大企業の株で構成されているため、「どの米国株に投資したらいいかわからない」という方にも適しています。
4.値上がり益(キャピタルゲイン)が狙える
高配当ETFとして注目を浴びるVYMですが、実は値上がりについても好成績を残しています。
設定以来で113%を超える値上がり率を記録しています。
分配を受け取りつつ値上がり(キャピタルゲイン)も狙える銘柄として非常に優秀です。
以上のメリットによりVYMは多数の投資家に支持されています。
VYMのデメリット
次にデメリットを見ていきます。デメリットは次の4点です。
- REIT(不動産)が含まれていない
- 値上がりがゆるやか
- 配当利回りは他の高配当ETFに比べると低め
- 分配金の再投資が面倒
- 二重課税される。それを取り返すのが面倒
1.REIT(不動産)が含まれていない
VYMを構成しているセクター(業種)の中に、REIT(不動産)は含まれていません。
よって、不動産という資産にも投資してリスクヘッジをしたいという方には向いていません。
REIT(不動産)も含めて投資したい方は高配当ETFのSPYDも検討するとよいかもしれません。
2.値上がりがゆるやか
先述の通りVYMは一定の値上がりは期待できますが、他のETFに比べ、値上がりはゆっくりです。
NASDAQを対象としたQQQ、S&P500を対象としたVOO、米国株式市場全体を対象とするVTIといった銘柄に比べると値上がり率は低いため、キャピタルゲインを狙うなら他のETFへの投資が有効です。
3.配当利回りは他の高配当ETFに比べると低め
VYMはキャピタルゲインが狙える一方、HDVやSPYDに比べると、配当利回りが低いです。
配当利回りを優先して考えるなら、VYM以外の高配当ETFを検討するのもよいと思われます。
4.分配金の再投資が手間
長期投資では分配金を再投資して元本に組み入れ、複利効果を享受するのがセオリーですが、ETFは投資信託と異なり、自動で再投資することができません。VYMから支払われた分配金を再投資するには自分で買付を行わなければならないため、手間がかかります。また、1回で受け取る分配金がVYMの1口分に満たなければ、分配金をそのまま再投資に回すことはできません。資金繰りやドル転のタイミングなども考慮しなくてはならないため、投資信託と比べ手間が多く発生します。長期投資を行うにあたって分配金を自動で再投資したい方は投資信託を活用することをおすすめします。
5.二重課税される。それを取り返すのが面倒
VYMは米国ETFであるため、米国と日本でそれぞれ課税される「二重課税」の問題が起こります。米国ETFの分配金は米国で10%の税率で源泉徴収された後、残り90%に対して日本国内で20.315%の課税がなされます。
この二重課税を解消する方法として外国税額控除の仕組みが用意されていますが、控除を受けるためには自分で確定申告をしなければなりません。この確定申告が非常に面倒なため、取り返すのがおっくうになります。
以上が、VYMのデメリットとなります。
まとめ
- VYMはFTSEハイディビデンド・イールド・インデックスで構成されているETF。
- VYMには他の銘柄に負けないメリットがある。
- デメリットもある。
VYMを使ったポートフォリオ例
最後に、VYMを使った投資の一例を紹介していきます。
基本のVYM100%ポートフォリオ
特徴:VYMのみで構成される基本的なポートフォリオ。
構成ETF | 比率(%) |
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF) | 100 |
バランスド・インカム&成長ポートフォリオ
特徴:高配当ETFを中心に、成長株と健康ケアセクターにも配分し、リスクヘッジとポートフォリオ全体の成長性を確保。
構成ETF | 比率(%) |
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF) | 40 |
VOO(Technology Select Sector SPDR Fund) | 20 |
VUG(Vanguard Growth Index Fund ETF) | 14 |
VIG(Vanguard Dividend Appreciation Index Fund ETF) | 13 |
VHT(Vanguard Health Care Index Fund ETF) | 13 |
セクターバランスポートフォリオ
特徴:高配当株を中心に、異なるセクターにバランスをとり、ポートフォリオ全体のリスクを分散。
構成ETF | 比率(%) |
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF) | 55 |
VGT(Vanguard Information Technology Index Fund ETF) | 15 |
VFH(Vanguard Financials Index Fund ETF) | 10 |
VHT(Vanguard Health Care Index Fund ETF) | 10 |
VNQ(Vanguard Real Estate Index Fund ETF) | 10 |
バランスド・グローバル・アプローチポートフォリオ
特徴:高配当株に加えて、全世界株や債券、不動産などのセクターにも配分し、リスクヘッジと安定性を考慮。
構成ETF | 比率(%) |
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF) | 40 |
VTI(Vanguard Total Stock Market Index Fund ETF) | 15 |
VT(Vanguard Total World Stock Index Fund ETF) | 15 |
BND(Vanguard Total Bond Market Index Fund ETF) | 15 |
VNQ(Vanguard Real Estate Index Fund ETF) | 15 |
ハイディフェンシブ・ポートフォリオ
特徴:高配当、ディフェンシブセクター(必需品、医療)および中期国債に重点を置き、安定性を追求。
構成ETF | 構成比率(%) |
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF) | 30 |
VIG(Vanguard Dividend Appreciation Index Fund ETF) | 20 |
VDC(Vanguard Consumer Staples Index Fund ETF) | 20 |
VHT(Vanguard Health Care Index Fund ETF) | 20 |
IEF(iShares 7-10 Year Treasury Bond ETF) | 10 |
人により取れるリスクは異なりますので、どの投資戦略が良いかは一概に言えません。
上記ポートフォリオ案が参考になれば幸甚です。
以上がVYMの紹介となります。次回もお付き合いいただけますと幸いです。