今回のテーマは、米国株必修科目3つ目「VT」を取り上げていきます。
VTとは、米国の資産運用会社「バンガード社」が提供するETF(上場投資信託)で、「分散が大事なのは理解しており、どの銘柄に投資すればよいかわからない」という方におすすめです。
概要
時間がない方向けの概要としては次の通りです。
- VTは全世界約47ヵ国、約2,900を超える銘柄に分散投資できるETF。
- VOOやVTI同様、右肩上がり成長を続けてきた実績あり。
- デメリットもある。
- VTIを使ったポートフォリオ例もあるよ。
VTって何?
まずはVTの構成やETFは何ぞやという点を見ていきます。
VTとはバンガード社が提供するETF(上場投資信託)で、正式名称は「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」です。VTは「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」に連動するETFです。
このインデックスは新興国先進国含む世界約47カ国大型・中小型株式約9,700銘柄で構成され、全世界の時価総額90%以上をカバーしています。つまり、このETF1本でまるっと全世界の株式に投資可能になる反則級の分散能力を持ったものとなります。
VTの基礎情報は次のとおりです。
ティッカー | VT |
名称 | Vanguard Total World Stock Index Fund ETF |
運用会社 | Vanguard |
ベンチマーク | FTSE Global All Cap Index |
市場 | NYSE ARCA |
経費率 | 0.07% |
構成銘柄数 | 9,689 |
VTの主要構成銘柄は次のとおりです。世界を代表する銘柄が指数に組み込まれていることが分かります。
ティッカー | 会社名 | 構成比率 | Market value |
AAPL | Apple Inc.(アップル) | 3.78 % | $1,407,760,938 |
MSFT | Microsoft Corp.(マイクロソフト) | 3.73% | $1,390,150,085 |
AMZM | Amazon.com Inc.(アマゾン) | 1.78 % | $662,480,629 |
NVDA | NVIDIA Corp.(エヌヴィディア) | 1.44 % | $535,348,422 |
GOOGL | Alphabet Inc. Class A(アルファベットA) | 1.09 % | $407,315,927 |
META | Facebook Inc. Class A(META) | 0.99 % | $368,138,985 |
GOOG | Alphabet Inc. Class C(アルファベットC) | 0.94 % | $352,134,224 |
TSLA | Tesla Inc.(テスラ) | 0.82 % | $306,224,765 |
BRK.B | Berkshire Hathaway Inc. Class B(バークシャーハサウェイ) | 0.78 % | $289,443,744 |
UNH | UnitedHealth Group Inc.(ユナイテッドヘルス) | 0.74 % | $274,935,082 |
※2023年10月31日時点の情報となります。
地域比率では北米が約6割を占めています。
市場比率ではアメリカが6割を占めています。上記地域比率や市場比率から、VTの約6割がアメリカ企業で構成されていることがわかります。
VTのパフォーマンスは?
VTの設定日(2008/6/26)以来チャートを見てみましょう。ご覧の通り、右肩上がりで成長していることがわかります。全世界の株式約9,700銘柄で構成され分散が効いており、主要構成銘柄の上位は時価総額が大きい企業が占めているため、財務健全性が高く、コロナショックを経験しても早期に株価が回復しています。約6割が米国株が占め、米国のハングリーな企業達の成長力と回復力が大きな魅力と言えます。
VTのメリット
このVTが巷では人気ですが、その理由は「圧倒的な分散能力にもかかわらず、超低コスト」にあると考えます。それぞれメリットを見ていきましょう。後ほどデメリットも記載しますが、そのデメリットを上回るメリットがありますので自信をもっておススメできます。
- 長期的に成長が期待できる
- 経費率が低い
- 株価が安いため、買いやすい
- 分散が効いている。
1.長期的に成長が期待できる
長期的に成長が期待できるVTは近年、パフォーマンスが非常に高く、価格は過去15年間でおよそ2倍となっており、リターンが十分に出ています。
また、レバレッジはかかっていないため値動きが大きくないので長期的な保有でゆっくりとリターンが得られます。
コロナ禍での下落も2019年の価格の近くで踏みとどまっており、底堅いETFと言われています。
2.経費率が低い
経費率とはファンドの資産残高に対する、ファンドの運用などにかかる経費の比率のことです。当然ながらお財布から出ていくお金は少ない方がよく、VTの経費率は0.07%と脅威の低コストを実現させています。これはバンガード社は長年低コストの商品提供にこだわり続けているコスト意識に起因します。
先述のとおり、新興国先進国含む世界約47カ国大型・中小型株式約9,700銘柄で構成され、全世界の時価総額90%以上をカバーできるVTを0.07%の経費率で買う事ができるのはほぼ反則技と言ってもいいくらいのコスパと言えます。
3.株価が安いため、買いやすい
現在の価格を比較するとVOOは418.37、VTIは98.33であり、VOOよりかは安いため買いやすいことが言えます。
※2023年11月25日時点の株価。
4.分散が効いている
VOO同様分散投資をしてリスクを低くした運用をすることが理想的です。金融庁もリスクを減らす方法の一つに分散投資をあげており、全世界株式約9,700社に投資するVTはリスク分散がされていると言えます。また、これからハイパーグロースとして成長していく可能性を持つ中小型株も投資対象としていることも魅力の一つです。例えば、S&P500に連動するVOOは米国大企業をメインとした構成銘柄であり、中小企業の恩恵を受けにくいとされます。
一方、VTの構成銘柄は中小型株を多く含んでいるので、その中から「GAFAM」を超えるユニコーン企業や、大企業が誕生する可能性があります。
伸びしろのある中小型株のリターンを受けられることもVTのメリットです。
以上のメリットによりVTは多数の投資家に支持されています。
VTのデメリット
次にデメリットを見ていきます。デメリットは次の4点です。
- 米国株式市場への一極集中リスクがある
- 少額投資では成果が出にくい
- 分配金の再投資が面倒
- 二重課税される。それを取り返すのが面倒
1.米国株式市場への一極集中リスクがある
VTは構成銘柄の約6割を米国株式で占められているため、米国経済および米国株式市場のパフォーマンスに非常に依存しています。
2.少額投資では成果が出にくい
VTは全世界株式約9,700社に分散して投資するため、価格の変動は小さいです。そのため、少額の投資資金で短時間でリターンを求める投資家には向いていないと言えます。
3.分配金の再投資が手間
長期投資では分配金を再投資して元本に組み入れ、複利効果を享受するのがセオリーですが、ETFは投資信託と異なり、自動で再投資することができません。VTから年4回(3月末・6月末・9月末・12月末)支払われた分配金を再投資するには自分で買付を行わなければならないため、手間がかかります。また、1回で受け取る分配金がVTの1口分に満たなければ、分配金をそのまま再投資に回すことはできません。資金繰りやドル転のタイミングなども考慮しなくてはならないため、投資信託と比べ手間が多く発生します。長期投資を行うにあたって分配金を自動で再投資したい方は投資信託を活用することをおすすめします。
4.二重課税される。それを取り返すのが面倒
VTは米国ETFであるため、米国と日本でそれぞれ課税される「二重課税」の問題が起こります。米国ETFの分配金は米国で10%の税率で源泉徴収された後、残り90%に対して日本国内で20.315%の課税がなされます。
この二重課税を解消する方法として外国税額控除の仕組みが用意されていますが、控除を受けるためには自分で確定申告をしなければなりません。この確定申告が非常に面倒なため、取り返すのがおっくうになります。
以上が、VTのデメリットとなります。
VTを持っているだけでプロの投資家に勝てちゃうかも!?
次にVTを買うだけでプロの投資家に勝ててしまうかもしれない点に触れていきます。VTは先述した4点のメリットの他に、配当があること及び増配することが挙げられます。
VTは年4回分配金を配当として株主に還元します。また、2013年に分配金が約1.22ドルだったものが、2022年には約1.89ドルにまでなっており、増配もしていることがわかります。
そのため、VTを買うだけで、キャピタルゲイン+配当+増配+分散という一石四鳥の投資戦略となることが言えます。プロの投資家の9割が市場平均に負けると言われる中、VTはプロの成績を上回るパフォーマンスを出しています。
まとめ
- VTは全世界株式約9,700銘柄で構成されているETF。
- VTには他の銘柄に負けないメリットが4点ある。
- デメリットもある。
- 超初心者でもプロの投資家に勝てちゃうかも!?
VTを使ったポートフォリオ例
最後に、VTを使った投資の一例を紹介していきます。
基本の全世界株式100%ポートフォリオ
特徴:VT一本で全世界株式市場に分散投資。幅広い企業に投資し、市場全体の動向に連動。
構成ETF | 比率(%) |
VT (Vanguard Total World Stock Index Fund ETF) | 100 |
高配当グローバルポートフォリオ
特徴: 高配当銘柄に焦点を当てたグローバルポートフォリオで、安定的な収益を目指す。
構成ETF | 比率(%) |
VT (Vanguard Total World Stock Index Fund ETF) | 40 |
VYM (Vanguard High Dividend Yield ETF) | 30 |
SPYD (SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF) | 30 |
リタイアメントグローバルポートフォリオ
特徴: 株式と債券、国際的な分散を組み合わせたリタイアメント向けのグローバルポートフォリオ。
構成ETF | 比率(%) |
VT (Vanguard Total World Stock Index Fund ETF) | 60 |
BND (Vanguard Total Bond Market Index Fund ETF) | 20 |
VXUS (Vanguard Total International Stock Index Fund ETF) | 10 |
BNDX (Vanguard Total International Bond Index Fund ETF) | 10 |
成長中小型株グローバルポートフォリオ
特徴: 成長が期待される中小型企業に焦点を当てたグローバルポートフォリオ。
構成ETF | 比率(%) |
VT (Vanguard Total World Stock Index Fund ETF) | 60 |
VB (Vanguard Small-Cap Index Fund ETF) | 20 |
IJR (iShares Core S&P Small-Cap ETF) | 20 |
テクノロジー重視ポートフォリオ
特徴: テクノロジーセクターに特化し成長を重視したグローバルポートフォリオ。
構成ETF | 構成比率(%) |
VT (Vanguard Total World Stock Index Fund ETF) | 40 |
QQQ (Invesco QQQ Trust Series 1) | 20 |
VGT (Vanguard Total International Bond Index Fund ETF) | 20 |
ARKK(ARK Innovation ETF) | 20 |
人により取れるリスクは異なりますので、どの投資戦略が良いかは一概に言えませんが、株初心者なら、持ってるだけでプロに勝てる可能性があり、維持が楽チンで、積立てるだけで良いVT等のインデックス銘柄のみでで良いと感じます。
以上がVTの紹介となります。簡単でパフォーマンスが出て、リスクもある程度分散されているVTは全投資家に知ってもらいたいです。次回もお付き合いいただけますと幸いです。