今回は高配当ETF「HDV」を取り上げていきます。
概要
時間がない方向けの概要としては次の通りです。
- HDVはモーニングスター配当フォーカス指数(Morningstar Dividend Yield Focus TR USD)に連動するように設計されているETF。
- メリットが5点ある。
- デメリットもある。
- HDVを使ったポートフォリオ例もあるよ。
HDVって何?
まずはHDVの特徴を見ていきます。
HDV(iShares Core High Dividend ETF)とは、BlackRock社が提供している「上場投資信託(ETF)」の一種です。
HDVは「モーニングスター配当フォーカス指数(Morningstar Dividend Yield Focus TR USD)」に連動するように設計されているETFで、2011年3月31日に設定されました。
モーニングスター配当フォーカス指数(Morningstar Dividend Yield Focus TR USD)とは?
モーニングスター配当フォーカス指数(Morningstar Dividend Yield Focus TR USD)とは、米国株式市場全体の約97%を占める「モーニングスター米国株式指数(Morningstar US Market Index)」の構成銘柄の中で以下の条件を満たす銘柄を指します。
・米国に存在する
・財務健全性が高い
・持続的に平均以上の配当を支払うことができる
・持続可能なビジネスモデルであり、継続的に高い競争優位性を持つと期待されるもの
・上記を満たした利回り上位75社の銘柄
つまり、HDVは「米国の財務健全性の高い企業のうち、配当利回りの高い75銘柄で構成されている高配当株ETF」という特徴を持ったETFであるといえます。
HDVは年4回の決算(3・6・9・12月)において分配金が支払われます。利回りはおよそ3~4%です。
年間分配金の推移を見るとは年々増配傾向にあります。
HDVの基礎情報は次のとおりです。
ティッカー | HDV |
名称 | iShares Core High Dividend ETF |
運用会社 | BlackRock |
ベンチマーク | Morningstar Dividend Yield Focus Index |
市場 | NYSE ARCA |
経費率 | 0.08% |
構成銘柄数 | 75 |
HDVのセクター比率は以下のとおりです。
構成銘柄はヘルスケア・エネルギー・生活必需品・情報技術が上位71%を占めていることがわかります。ヘルスケアやエネルギー、生活必需品セクターは人々の生活に根強く結びついていることから、ディフェンシブ銘柄を多く抱えており、財務健全性が高い企業が多いことが特徴となります。
また、年4回構成銘柄の組み換え(リバランス)が行われます。
※2023年12月27日時点の情報。
HDVの主要構成銘柄は次のとおりです。
上記セクター比率で取り上げたとおり、景気に左右されにくく株価や需要が安定しているセクターが多い構成比率となっています。
ティッカー | 会社名 | セクター | 構成比率 |
XOM | EXXON MOBIL CORP(エクソンモービル) | エネルギー | 8.19 % |
JNJ | JOHNSON & JOHNSON(ジョンソンエンドジョンソン) | ヘルスケア | 6.00 % |
CVX | CHEVRON CORP(シェブロン) | エネルギー | 5.99 % |
ABBV | ABBVIE INC(アッヴィ) | ヘルスケア | 5.80 % |
VZ | Verizon Communications Inc.(ベライゾン) | 通信 | 5.69 % |
PM | PHILIP MORRIS INTERNATIONAL INC (フィリップモリス) | 生活必需品 | 4.36 % |
MRK | MERCK & CO INC(メルク) | ヘルスケア | 3.97 % |
KO | COCA-COLA(コカ・コーラ) | 生活必需品 | 3.79 % |
PEP | PEPSICO INC(ペプシコ) | 生活必需品 | 3.69 % |
MO | ALTRIA GROUP INC(アルトリアグループ) | 生活必需品 | 3.53 % |
※2023年12月27日時点の情報。
HDVのチャートで見るパフォーマンスは?
HDVの設定日(2011年3月31日)以来チャートを見てみましょう。
2020年コロナショックによりHDVも大きく下落をしていきました。しかし、財務健全性が保たれた大企業の回復力に支えられ、その後回復し、堅調な推移で価格を上昇させています。
高配当+増配傾向+値上がり(キャピタルゲイン)も期待できる魅力あるETFといえます。
HDV・VYM・SPYDの3つを比較
高配当株を組み込んだ3つの高配当ETFを比較してみましょう。
いずれも配当率が高く、経費率も低めで、安定した収益が望める銘柄となっています。
中でもHDVはこの3つの中では2番目に利回りが高くなっています。一番利回りが高いSPYDと比べ、財務健全性の高い銘柄で構成されていることから値上がりも期待できることからバランスの良さが伺えます。
→財務健全性の高い銘柄(財務優良企業)を集中して組み入れていることから、安全性と高い利回りを両立させる銘柄。
・VYM
→構成銘柄数が多く分散効果が高い。経費率の低さもあり、安定した長期運用におすすめ。
・SPYD
→S&P500の対象銘柄の中から特に高配当の80銘柄を対象としているため、配当利回りは高め。
VYM | SPYD | HDV | |
運用会社 | Vanguard | State Street | Black Rock |
ベンチマーク | FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス | S&P500高配当指数 | モーニングスター配当フォーカス指数 |
構成銘柄数 | 452 | 77 | 75 |
経費率 | 0.06% | 0.07% | 0.08% |
直近配当利回り | 3.11% | 4.79% | 4.03% |
基準価格 | 107.84 | 36.71 | 100.69 |
特徴 | 平均以上の配当利回りがある米国企業に広く分散して投資 | S&P500採用銘柄で、配当利回りの高い77銘柄に投資 | 米国財務優良企業のうち、配当利回りの高い銘柄75銘柄に投資 |
HDVのメリット
HDVのそれぞれメリットを見ていきましょう。後ほどデメリットも記載しますが、そのデメリットを上回るメリットがありますので、高配当投資を目指す方には一考の余地があると思います。
- 分配金が年4回もらえる
- 配当利回りが高い
- 値上がり益(キャピタルゲイン)が狙える
- 経費率が低い
- 分散投資が可能
1.分配金が年4回もらえる
HDVは、3月・6月・9月・12月の年4回配当金が受け取れます。
四半期毎に配当金が出るため、定期的にキャッシュを得たい方には非常に大きなメリットと言えます。
HDVは保有しているだけで3~4%前後の配当金を得られるため、長期的な資産運用を目指している方にもおすすめできます。
年 | 分配金利回り |
2022 | 3.68% |
2021 | 4.00% |
2020 | 3.65% |
2019 | 3.80% |
2018 | 3.43% |
2017 | 3.59% |
2016 | 3.68% |
2.配当利回りが高い
先述したように、ここ5年間は3%~4%の配当利回りを達成しています。
HDVへ5,000万円投資し、配当利回りを4%と仮定した場合、5,000万円×0.04%÷12ヶ月≒17万円の配当がもらえる計算となります(税金を考慮せず)。月17万円あれば生活費を賄うことも不可能ではありません。
3.値上がり益(キャピタルゲイン)が狙える
高配当ETFとして注目を浴びるHDVですが、値上がりも期待できます。
設定以来で101%を超える値上がり率を記録しています。
分配を受け取りつつ値上がり(キャピタルゲイン)も狙える銘柄として非常に優秀です。
4.経費率が低い
経費率とはファンドの資産残高に対する、ファンドの運用などにかかる経費の比率のことです。当然ながらお財布から出ていくお金は少ない方がよく、HDVの経費率は0.08%と脅威の低コストを実現させています。
先述のとおり、財務健全性の高い75銘柄で構成されるHDVを0.08%の経費率で買う事ができるのはほぼ反則技と言ってもいいくらいのコスパと言えます。
5.分散投資が可能
HDV1銘柄だけで75社への分散投資を行えるので、1企業の業績が悪化した場合にも価格変動リスクを大幅に抑えられるでしょう。
企業選定や分析をBlackRock社のプロに任せることができ、その間自分は好きなことに時間を使えることも大きなメリットです。
またHDVは分散が効いているため、「どの米国株に投資したらいいかわからない」という方にも適しています。
HDVのデメリット
次にデメリットを見ていきます。デメリットは次の4点です。
- 構成銘柄数が少ない
- 構成セクターに偏りがある
- 値上がりはゆるやか
- 分配金の再投資が面倒
- 二重課税される。それを取り返すのが面倒
1.構成銘柄数が少ない
HDVはモーニングスター配当フォーカス指数(Morningstar Dividend Yield Focus TR USD)の75銘柄で構成されています。
VYMの約450銘柄数と比べると構成銘柄数が少なく、分散の面では若干の不安があります。
しかし、先述のとおり、年4回リバランスを行っていることから、安定性が低い訳ではありませんのでご安心ください。
さらに分散して高配当を投資したい方は高配当ETFのVYMも検討するとよいかもしれません。
2.構成セクターに偏りがある
HDVは、ヘルスケア・エネルギー・生活必需品・情報技術が上位71%を構成しており、若干ではありますが構成に偏りが見られます。
また、成長性があるIT・テクノロジーセクターの割合が約9%と低くなっています。
このことから、S&P500と連動するVOOや米国株式市場全体と連動するVTI、NASDAQ100と連動するQQQなどと比較すると、爆発的な成長可能性を秘めるIT・テクノロジーセクターの恩恵を受けられません。
ただし、HDVはあくまで高配当ETFであり、安定的なインカムゲインが期待できるのが最大のメリットであり、その点を考慮すると、大きなデメリットではないと言えると思います。
3.値上がりはゆるやか
HDVはヘルスケア・エネルギー・生活必需品等のディフェンシブ銘柄を多く抱えるセクターで構成されていることから、一定の値上がりは期待できますが、他のETFに比べ、値上がりはゆっくりです。
NASDAQを対象としたQQQ、S&P500を対象としたVOO、米国株式市場全体を対象とするVTIといった銘柄に比べると値上がり率は低いため、キャピタルゲインを狙うなら他のETFへの投資が有効です。
4.分配金の再投資が手間
長期投資では分配金を再投資して元本に組み入れ、複利効果を享受するのがセオリーですが、ETFは投資信託と異なり、自動で再投資することができません。HDVから支払われた分配金を再投資するには自分で買付を行わなければならないため、手間がかかります。また、1回で受け取る分配金がHDVの1口分に満たなければ、分配金をそのまま再投資に回すことはできません。資金繰りやドル転のタイミングなども考慮しなくてはならないため、投資信託と比べ手間が多く発生します。長期投資を行うにあたって分配金を自動で再投資したい方は投資信託を活用することをおすすめします。
5.二重課税される。それを取り返すのが面倒
HDVは米国ETFであるため、米国と日本でそれぞれ課税される「二重課税」の問題が起こります。米国ETFの分配金は米国で10%の税率で源泉徴収された後、残り90%に対して日本国内で20.315%の課税がなされます。
この二重課税を解消する方法として外国税額控除の仕組みが用意されていますが、控除を受けるためには自分で確定申告をしなければなりません。この確定申告が非常に面倒なため、取り返すのがおっくうになります。
以上が、HDVのデメリットとなります。
まとめ
- HDVはモーニングスター配当フォーカス指数(Morningstar Dividend Yield Focus TR USD)に連動するように設計されているETF。
- SPYDには他の銘柄に負けないメリットがある。
- デメリットもある。
HDVを使ったポートフォリオ例
最後に、HDVを使った投資の一例を紹介していきます。
基本のHDV100%ポートフォリオ
特徴:HDVのみで構成される基本的なポートフォリオ。
構成ETF | 比率(%) |
HDV(iShares Core High Dividend ETF) | 100 |
アセット・バランスド・ポートフォリオ
特徴:株式、債券、国際株、不動産・GOLDへの均等な配分により、リスクをバランスさせつつ、安定した成果を目指す。
構成ETF | 比率(%) |
HDV(iShares Core High Dividend ETF) | 20 |
BND(Vanguard Total Bond Market Index Fund ETF) | 20 |
VTI(Vanguard Total Stock Market Index Fund ETF) | 20 |
VT(Vanguard Total World Stock Index Fund ETF) | 20 |
VNQ(Vanguard Real Estate Index Fund ETF) | 10 |
GLD(SPDR Gold Shares) | 10 |
セクター分散ポートフォリオ
特徴:異なるセクターへの分散により、特定の業種に依存せず、経済の変動に対する抵抗力を高める。
構成ETF | 比率(%) |
HDV(iShares Core High Dividend ETF) | 20 |
XLF(Financial Select Sector SPDR Fund) | 20 |
XLP(Consumer Staples Select Sector SPDR Fund) | 20 |
XLK(Technology Select Sector SPDR Fund) | 15 |
XLY(Consumer Discretionary Select Sector SPDR Fund) | 15 |
XLU(Utilities Select Sector SPDR Fund) | 10 |
テクノロジーインカムポートフォリオ
特徴:テクノロジー株と高配当株を組み合わせ、成長と収益性を両立させる。
構成ETF | 比率(%) |
HDV(iShares Core High Dividend ETF) | 30 |
QQQ(Invesco QQQ Trust Series 1) | 30 |
VGT(Vanguard Information Technology Index Fund ETF) | 25 |
VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF) | 15 |
ハイディフェンシブ・ポートフォリオ
特徴:高い配当株、ディフェンシブセクター(必需品、医療)および中期国債に重点を置き、安定性を追求。
構成ETF | 構成比率(%) |
HDV(iShares Core High Dividend ETF) | 30 |
VIG(Vanguard Dividend Appreciation Index Fund ETF) | 20 |
VDC(Vanguard Consumer Staples Index Fund ETF) | 20 |
VHT(Vanguard Health Care Index Fund ETF) | 20 |
IEF(iShares 7-10 Year Treasury Bond ETF) | 10 |
高配当+イノベーション・フォーカス・ポートフォリオ
特徴:新興技術、イノベーション、および成長性の高いセクターに重点を置き、高いリターンを目指す。
構成ETF | 構成比率(%) |
HDV(iShares Core High Dividend ETF) | 30 |
VUG(Vanguard Growth Index Fund ETF) | 30 |
XLY(Consumer Discretionary Select Sector SPDR Fund) | 20 |
ARKK(ARK Innovation ETF) | 20 |
人により取れるリスクは異なりますので、どの投資戦略が良いかは一概に言えません。
上記ポートフォリオ案が参考になれば幸甚です。
以上がHDVの紹介となります。次回もお付き合いいただけますと幸いです。