面白い名前の投資信託「竹取物語」のパフォーマンスを深層分析する

1.要約

米国株式市場という、極めて合理的かつ透明性の高い、そして何よりも株主と投資家の利益が最優先される投資環境に身を置く視点から日本の投資信託市場を俯瞰すると、時折、非常に特異な商品設計やマーケティング手法を持つファンドに出会うことがある。その筆頭とも言えるのが、岡三アセットマネジメント(現・SBI岡三アセットマネジメント)によって運用されていた追加型証券投資信託「日本好配当割安株オープンⅡ」、愛称『竹取物語』である

本ファンドは、2006年3月8日に設定され、日本の金融商品取引所上場株式を主要投資対象とし、「収益性、成長性、業績変化率等から割安と判断され、株価の上昇が期待できる銘柄への投資」および「市場平均を上回る配当利回りの確保」を謳い文句として誕生した。その輝かしいネーミングと、定量的スクリーニングおよび定性的リサーチを組み合わせるという目論見書の美しい文言とは裏腹に、現実は投資家にとって極めて厳しいものとなった。基準価額の長期的な低迷、分配金の枯渇、そして高止まりした信託報酬という構造的な負の連鎖に陥り、最終的には受益権口数が規定の3億口を下回る状態が継続したため、2020年5月15日をもって運用を終了する「繰上償還」を迎えるに至ったのである

本レポートでは、この『竹取物語』というファンドがなぜ破綻と呼ぶべき繰上償還に至ったのか、そのポートフォリオの内実、グローバルスタンダードから著しく乖離した高額な手数料構造、そして競合する最新の低コストインデックスファンドやETFとの比較を通じて、同ファンドのパフォーマンスと構造的な欠陥を徹底的かつ辛口に、しかし客観的なデータに基づいて深層分析する。投資の世界においては、耳障りの良い物語や愛称よりも、冷徹な数字とコスト控除後のトータルリターンのみが真実を語るという事実を、本稿を通じて提示したい。

2.評価

まずは本ファンドに対する総合的な評価を下す。米国株投資家としてのシビアな基準に照らし合わせた結果である。

総合評価:D

評価基準としては、長期的な資産形成に資するものをSないしAとし、市場平均と同等のものをB、やや構造的な弱点を持つものをCとする中で、本ファンドに対しては最も厳しい「D(投資不適格レベル)」という判定を下さざるを得ない。表現は優しく努めるが、金融商品としての本質的な価値と投資家保護の観点を問うならば、以下の事実を看過することはできない。

この評価に至った最大の理由は、投資家の最大の敗北である「繰上償還」を招いた点にある。投資信託において最も避けるべき事態は、運用継続が困難となりファンドが強制的に解散させられる繰上償還である。本ファンドは2020年5月という、新型コロナウイルスによるパンデミック・ショックで世界の株式市場が暴落し、まさに底値圏で喘いでいたタイミングで償還された。長期投資の最大のメリットは、暴落時にも市場に留まり続けることでその後の回復局面におけるリターンを享受できる点にあるが、このファンドの投資家は強制的に市場から退出させられ、莫大な損失を確定させられる形となった。これは長期投資の前提を根本から覆すものである。

さらに、名ばかりの「好配当・割安株」という看板と、実際の運用における深刻なスタイルドリフト(運用方針のブレ)が見受けられたことも評価を大きく下げる要因である。ファンド名に「好配当割安株」と冠しながら、末期の組入上位銘柄にはファーストリテイリングなどの代表的な「低配当・ハイテク/グロース株」が名を連ねていた。これは、パフォーマンスの低迷を焦るあまり、当初の投資方針を逸脱して日経平均への寄与度が高い値嵩株のキャピタルゲインを狙いにいくという、アクティブファンドとして最も忌避されるべき運用姿勢に陥っていた可能性を強く示唆している。

加えて、グローバルスタンダードから大きく乖離した法外な手数料構造も無視できない。購入時手数料が上限3.24%(税抜3.0%)、さらに保有期間中にかかる運用管理費用(信託報酬)が年率1.65%(税抜1.50%)というコスト構造は、低コスト化が進む現代の投資環境においては正当化が極めて困難な水準である。投資家の得られるリターンの大部分が手数料によって相殺される設計であったと言わざるを得ない。そして、好配当を謳いながらも、末期においては「分配金ゼロ」という事態が連続し、インカムゲインの面でも完全に枯渇していた。総じて、愛称の『竹取物語』が示唆するように、光り輝く竹を切ってみたものの、中にはかぐや姫はおらず、残ったのは空っぽの竹筒と元本割れという厳しい現実だけであった。

3.内容の深掘り分析

本セクションでは、『竹取物語』のパフォーマンス、コスト構造、およびポートフォリオの内訳について、定量・定性の両面から深くメスを入れていく。表面上の愛称やセールストークに隠された、ファンドの真の姿を解き明かす。

3.1 基準価額と分配金の推移に見る元本毀損のプロセス

投資信託の成績を測る上で最も重要かつ唯一の絶対的な指標は、「トータルリターン(基準価額の変動と再投資された分配金の合計)」である。米国市場では、ファンドマネージャーの腕はこの一点のみで評価される。

『竹取物語』の償還直前である2020年4月30日現在の基準価額は「7,743円」であった。2006年の設定時の基準価額が10,000円であるため、単純な基準価額の変動としては約22.5%のマイナスを記録している。一方で、設定来の分配金合計額は「1,950円」であった。この受け取った分配金をすべて加味し、税金面などを一旦考慮せずに単純合算したとしても、10,000円で投資した資金の価値は「7,743円(残存価値)+1,950円(受け取った分配金)=9,693円」にとどまる。実に14年間という長期運用を行ったにもかかわらず、トータルでマイナスリターンに沈んでいるのである。

この14年間という期間の重みを考えていただきたい。2006年から2020年にかけては、確かに2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災といった未曾有の危機が存在した。しかし同時に、2012年末からのアベノミクスによる劇的な株価上昇局面や、世界的な金融緩和による強気相場も内包していた期間である。同期間において、日経平均株価やTOPIXといった市場平均(インデックス)は、暴落を乗り越えて設定時を上回る成長を遂げている。実際、同ファンドの設定来の分配金再投資基準価額の騰落率はマイナス6.59%であったのに対し、同期間の日経平均株価はプラス28.41%という大きな乖離を生んでいる。市場平均にこれほどまでに劣後し、14年を費やして元本すら回復できなかった事実は、アクティブファンドとしての存在意義が完全に喪失していたことを意味している。

3.2 枯渇したインカムゲインと分配金メカニズムの限界

好配当をテーマとするファンドの最大の存在意義は、定期的なインカムゲイン(配当収益)の還元にある。米国の配当貴族ファンドなどが長期にわたって支持されるのは、キャピタルゲイン(値上がり益)が伸び悩む局面であっても、安定したキャッシュフローを提供し続けるからである。しかし、同ファンドの末期の分配金推移を分析すると、インカムゲインを生み出すエンジンが完全に停止していた悲惨な状況が見て取れる。

決算期決算日分配金(1万口当たり・税引前)
第24期2018年2月23日750円
第25期2018年8月23日0円
第26期2019年2月25日0円
第27期2019年8月23日0円
第28期2020年2月25日0円

公開市場データに基づく最近5期の分配金推移

データが示す通り、2018年2月の第24期に750円という大型分配を出したのを最後に、その後2年間、計4回の決算にわたって分配金は「0円」となっている。これはファンド内で何が起きていたことを示しているのだろうか。

投資信託の分配金は、ポートフォリオ内の企業から得られる「配当収入」と、株式を売却して得られる「売買益」から支払われる。分配金がゼロになったということは、原資産からのインカムやキャピタルが、ファンドの莫大な維持コスト(年率1.65%の信託報酬)や相場下落による基準価額の毀損をカバーしきれなくなり、分配するための「原資」が物理的に枯渇したことを示している。日本の投資信託業界で悪名高い、元本を取り崩してまで分配金を支払う「タコ足配当(特別分配金)」を無理に行わなかったという点だけは、辛うじて評価できるかもしれない。しかし、「日本好配当割安株オープン」という名称を信じて、老後の生活資金の足しにするなどのインカムゲインを期待して投資した層にとっては、期待を根本から裏切る結果であったことは疑いようがない。

3.3 ポートフォリオの矛盾とスタイルドリフトの深い闇

米国機関投資家がアクティブファンドを評価する際、リターンと同じかそれ以上に厳しくチェックするのが「スタイルドリフト」の有無である。スタイルドリフトとは、例えば「バリュー(割安)株ファンド」が自身の成績不振を補うために、こっそりと「グロース(成長)株」に投資するなど、目論見書で宣言した約束や投資方針を破る行為を指す。これは投資家の資産配分(アセットアロケーション)を根底から破壊する行為として、厳しく批判される。

『竹取物語』の2020年春時点での組入上位銘柄のデータは、このスタイルドリフトの典型例を我々に提示してくれている。

組入順位銘柄名組入比率セクター
1中外製薬3.7%医薬品
2光通信3.5%情報・通信業
3ファーストリテイリング3.5%小売業
4島津製作所3.3%精密機器
5三井住友フィナンシャルグループ3.2%銀行業
6東京エレクトロン2.7%電気機器

2020年4月30日現在のマザーファンド組入上位銘柄

このリストを見たプロの投資家は、強烈な違和感と戸惑いを覚えるはずである。目論見書には「定量的スクリーニング(業績動向、配当利回り、PERなど)により割安度を判断する」と明確に記載されている。しかし、組入比率3位に君臨しているファーストリテイリング(ユニクロ)は、日本市場を代表する典型的な「グロース(成長)株」であり、PERは恒常的に高く、配当利回りに至っては当時1%前後に過ぎない銘柄である。1位の中外製薬や6位の東京エレクトロンも同様に、高PERで取引される成長・モメンタム株の代表格である。

確かに、5位の三井住友フィナンシャルグループなどは典型的な高配当バリュー株であり、当初のコンセプトに合致している。しかし、上位にファーストリテイリングや東京エレクトロンが組み入れられている事実は、ファンドマネージャーが「好配当」や「割安度」という当初の看板をかなぐり捨てていたことを如実に物語っている。日経平均株価への寄与度が高い値嵩株や、モメンタムの強いハイテク・成長株にすがりついてでも、低迷するパフォーマンスをなんとか改善しようと足掻いた痕跡(スタイルドリフト)であると推測される。

結果として、ファンドのコンセプトは完全に崩壊していた。高配当を求めて投資したはずの資金が、低配当のグロース株に投じられていたのであれば、それはもはや投資家への背信行為に近いと言っても過言ではない。

3.4 破綻の直接的要因:AUM(運用資産残高)の減少と繰上償還の悲劇

投資信託は本質的に「規模の経済」が働くビジネスモデルである。純資産総額(AUM)が減少すると、監査費用や信託銀行への支払いといった固定費の負担が相対的に重くなり、実質的なコストが上昇する。さらに、少額の資金では分散投資の効果を十分に得ることができず、効率的なポートフォリオの維持が不可能になる。

『竹取物語』は、償還直前の段階で純資産総額がわずか「1.8億円」にまで激減していた。投資信託約款では「受益権口数が3億口を下回る状態が継続した場合、繰上償還できる」と定められており、残高の大幅な増加も見込めないという極めて現実的かつ冷酷な判断から、運用会社は2020年3月9日に信託終了(解散)の決定を下すこととなった

ここには、日本の旧来型の投資信託ビジネスにおける残酷な現実が凝縮されている。販売会社である証券会社や銀行は、ファンドの設定時には「竹取物語」という親しみやすい愛称を用いて大々的な販売キャンペーンを行い、巨額の資金を集める。しかし、一度最大3.24%という高額な販売手数料を手にした後は、そのファンドを継続的にフォローアップすることは稀であり、次から次へと組成される別の「新しいテーマ型ファンド」の販売へと顧客を誘導(乗り換え営業)していく。その結果、既存ファンドへの新規の資金流入は止まり、相場下落時に既存投資家からの資金流出(解約)だけが加速し、ファンドは静かに死(繰上償還)に至るのである。

4.競合他社商品との比較

本セクションでは、『竹取物語』がいかに時代遅れのコスト構造を持っていたかを明らかにするため、現代の主流である競合他社商品(低コストインデックスファンドやETF)と具体的な数値を用いて比較する。また、日本の市場特有の「愛称付きテーマ型ファンド」の異常性についても考察を加える。

4.1 圧倒的な手数料格差が生み出す絶対的なハンデ

投資の世界において、投資家が将来のリターンを正確に予測することは不可能であるが、唯一、確実にコントロールできる変数が「コスト(手数料)」である。コストは確実にトータルリターンを蝕む確実なマイナス利回りとして作用する。『竹取物語』のコスト構造を、類似のコンセプトを持つ日本の高配当株ETFと比較してみよう。

ファンド名商品分類購入時手数料運用管理費用(信託報酬・年率)
竹取物語(日本好配当割安株オープンⅡ)国内アクティブ投信上限 3.24%(税込)1.65%(税込)
NEXT FUNDS 日経平均高配当株50 ETF国内ETF証券会社の株式売買手数料に準ずる0.308%(税込)
上場日経高配当50(Amova ETF)国内ETF証券会社の株式売買手数料に準ずる0.165%(税込)

この表を見れば、勝負は投資家が資金を投じる前から既に決着がついていたことが容易に理解できる。

例えば、退職金などのまとまった資金である1,000万円を投資した場合をシミュレーションしてみる。『竹取物語』では、購入した瞬間に上限である約32万4,000円が販売会社の手数料として消え去る。つまり、運用は967万6,000円からスタートすることになる。さらに、毎年約16万5,000円(1.65%)が信託報酬として無慈悲に引き落とされ続ける。

一方で、Amovaの上場日経高配当50ETFであれば、ネット証券などを利用すれば購入手数料は実質無料に近い水準に抑えられ、信託報酬は年率わずか0.165%(1,000万円に対して年間1万6,500円)である。『竹取物語』は、最新の高配当ETFと比較して、実に「10倍」もの維持コストを毎年投資家に要求していたのである。複利効果が働く長期投資において、年率1.5%以上のコスト差は致命的である。これほどの重いハンデ(足枷)を背負って市場平均に打ち勝つことは、いかに優秀なリサーチチームやファンドマネージャーを擁していようとも、数学的に極めて困難であると言わざるを得ない。

4.2 「物語(愛称)」マーケティングの蔓延と終焉

日本の投資信託市場には、かつて複雑な金融商品に対する個人投資家の心理的ハードルを下げる目的で、親しみやすさを演出する「ユニークな愛称」をつける文化が蔓延していた。調査データによれば、『竹取物語』以外にも以下のような奇妙な愛称を持つファンドが多数存在していることが確認できる。

  • 『受取物語』(グローバル・エマージング・ボンド・オープン)
    • 新興国の米ドル建て公社債に投資し、高い分配金(受け取り)を期待させるネーミングである。しかし、信託報酬は年率1.672%と依然として高額な設定となっている。
  • 『妖精物語』(ゴールドマン・サックス毎月分配債券ファンド)
    • 主として日本を除く世界各国のグローバル債券に分散投資を行う。信託報酬は1.155%である。
  • その他の事例
    • 『インフラくん』『地球くん』といった擬人化シリーズや、『京・近江ブンさん』のようなダジャレ(分散=ブンさん)、さらには『毎月サンバ』『コアラの贈り物』など、金融商品とは到底思えない名称が乱立していた。

米国市場において、機関投資家や真剣な個人投資家向けの商品に、このような情緒的・ファンタジー的な名称が付けられることはまずあり得ない。投資とは、冷徹なリスクとリターンの計算、確率論的アプローチに基づく資本の配分であり、感情や「物語」が入り込む余地はないからである。

『竹取物語』やこれらのファンドが示唆しているのは、複雑で高コストな金融商品を「おとぎ話」や「親しみやすいキャラクター」のパッケージで包み込み、高額な手数料への抵抗感を和らげるという、売り手側(金融機関)にのみ都合の良いマーケティング手法の存在である。

4.3 市場シェアと投資家動向のパラダイムシフト

しかし、日本の投資家も決して愚かではない。2020年前後の市場ランキングデータを分析すると、日本の個人投資家が急速に「合理的な判断」へとシフトしているパラダイムシフトが明確に読み取れる。

大手ネット証券であるSBI証券などの2020年代初頭の人気ファンドランキング(つみたてNISAやポイント利用など)を見ると、上位を独占しているのは以下のファンド群である

  1. SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(超低コスト米国株式)
  2. ニッセイ外国株式インデックスファンド(低コスト先進国株式)
  3. eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(超低コスト米国株式)
  4. eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(超低コスト全世界株式)

ランキングの上位には、『竹取物語』のような「愛称がついたテーマ型・高手数料の国内アクティブファンド」は影も形も存在しない。現代の日本の投資家は、金融機関の窓口で対面で勧められる美辞麗句や物語よりも、インターネット証券を通じて自ら情報を取得し、信託報酬が0.1%台という透明性の高いインデックス投資を自発的に選択するようになっているのである。

『竹取物語』の純資産が1.8億円まで枯渇しひっそりと市場から姿を消した一方で、eMAXIS SlimシリーズやSBI・Vシリーズが数兆円という莫大な規模の資金を集めている事実は、日本市場における「高コストアクティブファンドの淘汰」という残酷だが極めて健全な新陳代謝の進行を示している。

5.今後について

『竹取物語』の末路(繰上償還)は、単なる一つの個別ファンドの失敗に留まらず、今後の資産運用業界および個人投資家に対する重要な教訓を含んでいる。米国の視点から見ても、以下の3点は今後の日本の資産運用市場が乗り越えるべき課題であると言える。

第一に、「テーマ型」および「愛称付き」ファンドへの根強い警戒である。今後も、新しい市場の流行(例えば、AI、半導体関連、ESG、宇宙産業など)に乗じた、キャッチーな愛称やテーマを持つファンドが次々と組成されるだろう。しかし、投資家は表面的な「パッケージ(愛称やテーマ)」に惑わされることなく、「中身(目論見書に記載された真の投資対象や運用手法)」と「コスト(信託報酬、購入時手数料)」のみを直視して評価を下す規律を持ち続ける必要がある。

第二に、インカムゲイン(配当)とトータルリターンの明確な切り離しである。『竹取物語』のように、目先の配当利回りの高さを追求した結果、成長性の欠如や株価下落によってトータルリターンが元本割れを起こしてしまっては本末転倒である。「配当」はあくまで企業利益の還元の一形態に過ぎず、投資の究極的な目的は「総資産の持続的な増加(トータルリターンの最大化)」でなければならないという、ファイナンスの基本原理に立ち返るべきである。

第三に、運用会社および販売会社における受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)の厳格化である。純資産総額が数億円規模にまで落ち込み、実質的に運用が機能不全に陥ったファンドを長期間放置し、最終的にパンデミックによる市場の底値圏という最悪のタイミングで強制償還させるような事態は、顧客の利益を最優先する運用会社として極力避けるべきであった。今後は、資金流入が見込めない小規模ファンドの速やかな統廃合ルールの透明化や、投資家が「ファンドの死(償還)」による不測の甚大なダメージを受けないような、業界全体のガバナンスと倫理観の向上が強く求められる。

6.結論

「竹取物語」——それは日本最古の物語とも言われ、光り輝く竹の中から現れた美しいかぐや姫が、最終的には数々の宝物(求婚者たちからの贈り物)を地上に残したまま、手の届かない月に帰ってしまうというストーリーである。

皮肉なことに、投資信託『竹取物語』の14年間にわたる軌跡は、この原作のプロットを別の残酷な意味で忠実に再現してしまったと言える。設定当初は「好配当・割安株」という光り輝く魅力的なコンセプトを掲げ、多くの投資家から多額の資金(求婚者からの贈り物=高い購入手数料と運用資金)を集めた。しかし、長期的な優れたパフォーマンスという「かぐや姫」は決して投資家のもとには留まらず、最後は月ならぬ「繰上償還」という結末へと、逃げるように姿を消してしまったのである。あとに残されたのは、トータルリターンがマイナスとなり傷ついた投資家の口座残高と、運用会社および販売会社が長年にわたって確実に徴収し続けた高額な手数料の履歴という、虚しい竹筒だけであった。

本ファンドの深層分析を通じて得られる最大の教訓は、「投資の世界にファンタジーは存在しない」という冷徹な事実である。長期にわたる優れた投資成果は、美しい愛称や耳障りの良いストーリーから生まれるものではない。それは、厳格な投資規律、徹底した低コストの追求、そして長期的な資本市場の成長を確実かつ静かに取り込む構造(インデックスファンド等)からのみもたらされるのである。

米国の合理的な投資家層がとうの昔に気づいている通り、感情を完全に排し、手数料のコンマ数パーセントにまで執拗にこだわる「冷たい計算」こそが、最終的に投資家の資産を守り、育てる唯一の魔法なのである。日本の個人投資家が『竹取物語』のような前時代的な商品から決別し、より合理的で低コスト、かつ透明性の高い投資手段へと本格的にシフトしつつある現状のデータを目の当たりにし、一人の米国株投資家として非常に喜ばしく、また日本の市場の未来を心強く感じている次第である。

7.注意

本記事は、公開されている市場データおよび調査レポートに基づき、投資判断の参考として作成されたものです。実際の投資にあたっては、各国の法規制、市場動向、および企業の財務状況を十分に精査した上で、自己責任で行ってください。

>圧倒的パフォーマンスを見せてきた米国ETF・VOO

圧倒的パフォーマンスを見せてきた米国ETF・VOO

投資の神様とも呼ばれるウォーレン・バフェットも推すVOO。そのパフォーマンスや参考ポートフォリオ案をご覧いただき資産形成にご活用ください。

個人的に手間がかかず、コストパフォーマンスや暴落耐性等のバランスのとれたNo.1のETFだと信じております。

CTR IMG